能楽は、日本を代表する古典芸能であり、世界に誇る文化遺産であります。当財団は、その伝承と普及振興に努めるべく、能楽師の技巧の向上、新たな担い手の養成や、芸術的要素を含み重要な存在である能面・能装束やその他の道具の保存と公開を行ってまいります。また、寛政年間に宮廷文化を基盤に創始された京舞についても同様のことを行ない、その伝承者の技芸研鑽とともに、舞を通じて情操を養う機会も提供してまいります。
 能楽・京舞といえば敷居が高いと思われがちですが、多様な公演形態による催しや身近に触れることのできる機会を提供していく場として財団施設の一部開放・公開も行います。
 日本文化のふるさと、京都における日本の伝統芸能の伝承の場としてふさわしい施設とするために関連する京都の伝統産業とも共生できるような空間を作ることも視野に入れております。また、急速な進歩を遂げる高度情報技術も活用し、これからの時代に合った舞台芸術の発展を目指し、将来の展望を描いてまいりたいと存じます。


当財団は、立命館大学との間で、学術研究と伝統芸能発展のために協定を結び、共同作業を行っております。映像、音声資料のデジタルアーカイブ保存をはじめ、将来を見据えた新しい活動を推進してまいります。

■デジタルアーカイブ
平成9年より、井上流京舞に関する昭和初期の映画を主体に、修復作業を行い、その素材を使って、影写会も行っております。その他、財団が保有するAV資料を後世に良好な保存状態で伝えるための作業が進められております。
また、能や、京舞の現役の芸も、デジタル映像での撮影が行われており、これまで「直伝」に頼ってきた芸の伝承についても新しい方法が模索されつつあります。

■能舞台のCG化と「能の絵本」
能楽師の舞をモーションキャプチャーで捕らえたデータをもとに、立命館大学アート・リサーチセンターの赤間亮教授らの研究グループがコンピューターグラフィックス(CG)を作成し、話題を呼びました。
これは能の初心者向け解説などに活用できるもので、能楽堂での上演の前にCGを見てもらい、初心者にも具体的なイメージをつかんでもらえるというものです。
また子供たちに能をもっと身近に感じてもらおうと、能の人気曲を絵本にして、「お能の絵本シリーズ」として刊行いたしております。この絵本にCGやマルチアングルで撮影した実演とを組み合わせれば、古典芸能普及のための画期的なプログラムができ上がります。