プロジェクト紹介
宗教・思想史関連
真言密教を中心とした聖教世界の研究プロジェクト
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 川嶋 將生
京都においては、世俗的権力を行使した天台宗に対して、真言宗は世俗的権力の外護をうけながら宗教世界において大きな影響力をもった。近年、聖教研究は大きな進展をみせているが、本研究プロジェクトは、真言宗寺院が京都において果たした歴史的役割に鑑み、聖教研究を中心とした真言密教世界の分析を行う。その際、分析の中心となるのは、藤井永観文庫蔵資料である。藤井永観文庫所蔵の聖教は、かつて東寺に所蔵されていたものが、なんらかの理由によって外部に流出したものを多く含み、その点でも格好の素材となる。
近世学問都市京都の総合的研究
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 桂島 宣弘
本プロジェクトは、個別の学問・学者に拘泥されず、近世学問都市京都について総合的に考察する。具体的には、アジアの中の京都の学問的な地位に注目しながら、学塾の分布、ネットワーク、門人の移動と交流、江戸・大阪はもとより清国・朝鮮王朝との比較などを行い、京都教学の学問的特質を明らかにしていきたい。また、学問研究においては、典籍をめぐるネットワークは殊に欠かせない。輸入・移入の経路、書肆の分布、販売網、貸借網などを明らかにすることに重点的に努め、国際的な典籍ネットワークを明らかにし、それが、学問動向とどのような関連にあるのかを分析する。以上についての国際シンポジウムの開催も予定している。------ プロジェクトのHPへ
京都寺院に於ける伝統的宗教儀礼研究
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 本郷 真紹
当プロジェクトでは、平安期以前の宗教儀礼、具体的には、伝統的な神祇の祭礼と、仏教儀礼の特質を究明することを試みる。とりわけ後者については、平安仏教を構成した天台宗及び真言宗の法会や修法にスポットをあて、文献資料に窺われるその実態と変遷の過程を確認し、最終的には今日伝存する形態との異同を確認した上で、その意義について考察を加える。同時に、今日の儀礼の中で原初的な要素を残存する部分を抽出し、他の文化的事象との企画検討を通じて、相互の関連性とその経緯を探り、トータルとしての文化の特質形成に果たした役割を究明する。研究成果は、最終的には今日の儀礼の取材・編集作業を経て、ビジュアルな形で記録・公表することを目指す。
「Web版画題辞典」(仮称)構築のための総合的研究
プロジェクトリーダー:文学研究科・日本文学専攻/助教授 中本 大
文学と絵画を結ぶ重要な契機の一つに「画題」という概念があります。日本人は古くから中国大陸や朝鮮半島の文化を受容し、それを解釈し、新しい意味や視点を付け加えることで独自の文化を作り上げてきました。外来の事物をどのように解釈し、何が理解できなかったか、そうした日本人の文化受容や独特の文化形成を考察する上で、「画題」は重要な端緒となります。
本プロジェクトでは、これまで明確な語義や定義を持たなかった「画題」の新たな概念の提供を行うための試みとして、禅宗寺院を中心とする京都市内仏教寺院に現蔵あるいは伝来したとされる障壁画・障屏画作品に 利用された題材(典拠・出典)のデータベースを構築し、文学・歴史学・美術史学の各領域を横断した多様な情報を付加し公開することが最大の目的となります。
典籍・書籍関連
日本古典に於ける人間と環境 −平安貴族とその周辺−
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 杉橋 隆夫
平信範(たいらののぶのり、1112〜87)は、公家有職と行政の核心に通暁した院政期の中級貴族・実務官僚である。彼が入手した有職・行政に関する精確かつ大量な情報は、その日記『兵範記』に詳細に記されており、当該期歴史研究の根本史料として重要視されている。本プロジェクト(「日本古典における人間と環境−平安貴族とその環境−」)では、『増補資料大成 兵範記』を原本(写真版)照合しつつ精読のうえ人名索引を完成させ、データベース化作業にも取り組む。また、京都大学蔵平松家本『兵範記』の断簡調査を行い、現行の刊本・写真版、同時期の古記録類と対校することで、断簡の『兵範記』における本来の所在場所を確定し、より厳密で精確なテキストの完成を目指す。さらには、主として『兵範記』の記事に依拠しつつ、院政期の京都を立体的視覚的に表現することを目的として、地理・考古学、情報分野等、他の研究プロジェクトと連携しながら、『平安貴族の見聞地図』(仮称)と題するCGの作成を企図している。
絵画と書物プロジェクト
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 赤間 亮
日本の書物や摺物におけるエンタテインメント性を追求するプロジェクトである。日本の書物の特徴の一つに絵画と書物の融合があげられる。そこには、絵画とテキストと間に起る共鳴空間があり、日本の文化を解明する様々な素材を提供している。このプロジェクトでは、そこにあるエンタテインメント性を具体的な資料を取り上げながら解明していく。画像データベースや伝統的な文化のエンタテインメント性を追求するプロモーションビデオの制作という文化系のプロジェクトには一般的に欠陥しているスキルも要求されるプロジェクトである。一方で、大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館、フランクフルト工芸博物館等、ヨーロッパの大規模博物館との共同による展覧会やWEB公開活動も特徴となり、海外との学術交流を目指すプロジェクトメンバーには最適のプロジェクトとなるであろう。------プロジェクトのHPへ
京都学デジタル図書館の構築プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/助教授 前田 亮
近年ディジタル図書館やディジタルアーカイブが注目され、様々な文化的資料のディジタル化や保存に関する研究が盛んに行われている。しかしながら、それらのコンテンツに対して容易で効率的なアクセス手段を提供するという観点からの研究はまだ多くはない。コンテンツの量が膨大になればなるほど高度なアクセス手段が要求されることは、現在のWEBの状況を見ても明らかである。本研究プロジェクトでは、主に文字情報を対象として、高度な情報アクセスを実現する手法について研究を行う。具体的には、本COEプログラムの研究対象となる典籍・古文書などに対して、単なる文字列マッチングではなく、文書全体あるいは単語単位、さらには文字単位で意味を解析することにより、たとえば現代語によって検索する機能や、現在の文字コードに含まれない文字を含む文書を検索する機能を実現する。さらに、本COEプログラムの研究成果を広く世界に向けて発信するために、コンテンツの翻訳版を用意することなく検索を可能とする言語横断情報検索技術について研究を行う。
伝統工芸関連
近世京都手工業生産プロジェクト
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 和田 晴吾
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 木立 雅朗
京都における伝統工芸とその技術は、京都の歴史を従来の歴史観とは異なる角度から照射する生き証人である。ここでは、京焼・石造物・鋳造・造瓦などについての民俗考古学的分析を中心に検討し、あわせて技術や資料のデジタル・アーカイブ、三次元計測・蛍光X線分析を行う。考古学・民俗学・美術史・文献史などの多くの分野から、京都における伝統工芸とその技術の歴史について、総合的な研究を進める。
日本・京都とユーロ=アジアにみる「装飾」芸術の世界性プロジェクト
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/教授 鶴岡 真弓
日本の芸術の特徴は、華やかで洗練された「装飾」性にある。とくに京都は、日本を代表する「装飾空間」である。「祇園祭」に繰り出す山鉾。能や歌舞伎や舞妓の衣装。寺院の建築。町屋に残る家具・調度。それらの美術は、織物・金工・漆工などの工芸の粋によった『装飾』に支えられ輝いている。誰もが知っているだろう、祇園祭の山鉾に化粧されるタピスリーや絨毯は、中国や遠くヨーロッパから来た図像や文様で彩られていることを。
そう、最も「京都固有」、最も「日本固有」といわれている美が、実ははるかな「世界性」を持っているのだ。「祇園祭は装飾の世界様式」なのである。
「京都(日本)とユーロ=アジアにみる「装飾」芸術表象の世界性」の研究と題するこのプロジェクトは、京都・日本をアジアとヨーロッパにつなぐ「装飾文様」をみつめ、極東をめざし越境してきた装飾文様のスタイルの歴史を追いながら、京都・日本が装飾の美術によって世界と交流したダイナミズムの芸術表象史を明らかにしていく。
文化財の3次元物体モデリングとビジュアライゼーション
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 田中 弘美
臨場感を持って意のままに対話的に文化財を鑑賞,操作,体験することができる 「時間 と空間の壁」を越えるバーチャル/デジタルミュージアムの実現が期待されている.本プロジェクトでは,能面や能装束,土器等を対象とし,それらのデジタル保存とアーカ イブ化を目的とした3次元物体モデリングと可視化の研究を進めている.具体的には, a)能面を非接触で観測した画像情報を用いて, その3次元形状,表面の色,光沢や質感を高精度に且つ高圧縮して記述する3次元物体モデリング法, b)能装束の光沢や質感再現のための,織布の光学的反射特徴を記述する布の異方性反射モデリング法, c)少数視点のX線画像と距離及びカラー画像を用いて土器の内部構造を復元し,不可視な内部構造の立体視が可能な,ディジタル実測図を自動生成する方法,d)実空間では触れて鑑賞することが困難な貴重な文化財の,形,色,質感等と共に重さ・堅さ・柔軟度・ざらざら感等の力学的物理情報をモデリングする方法と,生成されたモデルを用いて,力触覚デバイスにより仮想空間において対話的にモノを操作し体験すること可能にする仮想環境シミュレータの構築法を研究している.
芸術の京都・芸術のアジアプロジェクト
プロジェクトリーダー:総合学術研究科/教授 神林 恒道
この研究は、立命館大学COEプログラム京都アート・エンタテインメント創成研究の一環として、日本文化を象徴する京都の文化芸能について、従来の文献中心の理論研究を越えたより具体的で実証的な研究を目指すとともに、その文化の基層にある汎アジア的美意識の広がりにまで目を向けようとするものである。そのために重視されるのが、アート・リサーチセンターのデジタル・アーカイブ資料であり、これを有効に活用することにより、かつてない独自の研究が展開されるものと考えている。
芸能史・舞台関連
芸能伝承プロジェクト
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 川嶋 將生
本研究プロジェクトは、日本における芸能伝承がどのようにして行われてきたのか、さらに将来、それはどのような方法で伝承・維持されようとしているのかの分析を試みるものである。家元制度の分析を中心としながらも、家元制度にとらわれずに伝承されてきた伝統芸能も取り上げる。また生間流など料理技術を守ってきた家なども検討し、社会学的な研究成果も取り入れた研究とする。日本の芸能伝承の特色を明らかにするためにも、アジア、特に中国・韓国などの例も視野に入れながら検討する。
京都芸能プロジェクト
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 赤間 亮
京都は、日本文化・芸能の発祥の地である。能・狂言、歌舞伎、京舞、人形浄瑠璃などを対象として、様々なデジタルアーカイブ技術を活用しながら、伝統芸能を現代のエンタテインメントとしてプロモートする手法を開発する。具体的には、各種舞台の映像・画像アーカイブや、マルチアングル撮影、モーションキャプチャデータの活用、上演情報データベースや、舞台空間情報管理システムを活用した全く新しい舞台鑑賞ソフトの開発を目指している。------プロジェクトのHPへ
芸能音楽の記録と再現のための高度アーカイブシステムの開発
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/教授 山下 洋一
これまでに開発されている音声認識および音声合成などの要素技術を統合して汎用的な音声インタフェースを構築するとともに、具体的なアプリケーションを対象にして、音声対話システムを実現する。さらに、音声を中心としたメディアコンテンツを対象として、セグメンテーションやインデキシング、重要箇所の同定など、コンテンツの構造分析や自動構造化にも取り組む。
舞踏のデジタルアーカイブプロジェクト
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 八村 広三郎
日本舞踊、能、歌舞伎などの伝統舞踊、海外の民族舞踊など、無形文化財と呼ばれているもののうち、人間の身体運動に関わるものをとりあげ、これらをデジタルアーカイブ化するとともに、情報科学的観点から、解析・処理をします。身体動作の計測には、本学、アート・リサーチセンターに設置されている光学式モーションキャプチャシステムを使用します。情報処理は各種の観点、すなわち、身体動作の定量的動作解析、身体動作の類似検索、特徴的身体動作の抽出など、感性情報処理的アプローチも試みます。
また、モーションキャプチャにより得られたデータから、3次元CGを作成し、教育用のコンテンツとしての利用を検討し、可能なものは、Webにより配信することも計画しています。
さらに、最新の仮想現実感(複合現実感)技術を利用し、CGと実演の競演のような新しい試みについても研究します。
文化開発都市関連
京都映画文化における地域文化発信機能の形成と展開プロジェクト
プロジェクトリーダー:文学研究科・史学専攻/助教授 冨田 美香
本研究の目的は、京都の歴史・伝統産業の集大成として成立した映画産業・文化を多角的に分析し、京都という時空間そのものを表象のレベルで問い直すと同時に、映画文化に関わる新しい世代の育成とネットワーク形成も含め、地域文化の発掘・創出と活性化を試みることにある。研究概要は、1.映画=地域文化の生成研究(マキノおよび大映京都撮影所を対象とし、撮影所概要、映画人展拠録、作品情報およびロケ地情報に関する調査)、2.映画=地域文化の受容研究(内外の都市での映画受容様態をとおして、映画によるアイデンティティ形成過程を調査)、3.映画=地域文化の育成(映画人への聞き取り調査時や、基盤としてのフィルム文化、地域映像文化に関する映像記録を作成し、あらたな地域文化創出拠点を形成)、の3本柱で構成する。
Digital Art Entertainmentとしてのテレビゲームの研究
プロジェクトリーダー:政策科学研究科・政策科学専攻/教授 細井 浩一
本プロジェクトの主要なテーマは以下の3つである。
(1)テレビゲーム成立史
任天堂のファミコン開発者を共同研究者として、デジタルエンタテインメントをめぐる様々な技術的要因や人的要因が、京都・任天堂における1983年のファミリーコンピュータの開発に結実していくプロセスを、当時の技術資料や関係者ヒアリングなどの一次資料をベースとした成立史研究を行う。
(2)ゲームアーカイブの構築とデジタルライブラリ
1998年より構築しているテレビゲーム(ハード、ソフト)の現物アーカイブをベースにして、インタラクティブ性の高いマルチメディアコンテンツのデジタルライブラリ化の手法を研究し、テレビゲームのデジタルライブラリを試作する(FDL=FamilyComputer Digital Library)。
(3)アート・エンタテインメントとゲーム・デザイン
テレビゲームのもつ可能性を遊戯以外の社会的コンテキストに位置づける研究として、テレビゲームの持つ特徴的なインタフェースやシステムがユーザーに対して持つ訴求力の基礎研究を行う。また、文化的コンテンツを広義のアート・エンタテインメントとしてとらえ、RPG性をもった体験型シミュレーション、エンタテインメント指向のe-learningシステムやWeb協調空間環境をデザインするための研究を行う。
バーチャルタイムスペース関連
GISによる京都バーチャル時・空間の構築プロジェクト
プロジェクトリーダー:文学研究科・地理学専攻/教授 矢野 桂司
GISによる京都バーチャル時・空間の構築のプロジェクトでは、現在の京都の最も精度の高いバーチャル京都をMapCubeをベースに構築しており、現存する社寺や京町屋を残しながら、過去の京都の景観復元を行っている。その過程において、明治以降の官製地形図や地籍図のデジタル化を行い、過去の景観復元に活用している。とりわけ、都心部における京町家の空間的分布の把握は、過去の景観復原のキーになるとともに、近年の京都市における景観問題の基礎資料ともなる。また、3次元の京都バーチャル時・空間の構築に際しては、最先端の3次元の形状モデリングをはじめ、テクスチャ技術が用いられる。
京都アート・エンタテインメント文化の継承と創成のためのナレッジブルアーカイブに関する研究
プロジェクトリーダー:政策科学研究科・政策科学専攻/助教授 稲葉 光行
本研究では、京都アート・エンタテインメントの歴史文化的背景を学習し、またそこから新しい文化創生を行うためのインフラとして、「京都文化ナレッジブル・アーカイブ」の構築を目指している。
具体的には、京都に関わる無形文化財、映画、テレビゲームに関する情報などを元に、鑑賞者が持つ知見や知識を新しいコンテンツとして追記していく仕組みの設計と試作を行う。また、文脈の異なるコンテンツ同士を結び付けることで、鑑賞者の視点による新しいコンテンツを創り出す行為を支援する仕組みについても、設計と試作を行う。本研究の最終段階として、鑑賞者による協調学習や協調編集が可能なデジタルアーカイブをインターネット上で公開し、検証実験を行う。
「Kyoto Virtual Time Space」構築のためのゲームエンジン開発とコンテンツマイニング
プロジェクトリーダー:COE推進機構/教授 Ruck Thawonmas
本プロジェクトは、市場が急速に拡大しているオンラインゲームや双方向メディアの分野に必要とする研究課題を取り組んでいる。具体的には、オンラインゲームでのプレイヤーの挙動・会話を解析し、結果をより魅力的なコンテンツ作りへ反映させる「ゲームマイニング」とゲームキャラクタに人工知能を持たせて自発的に物語を演じさせ、プレイヤーの割り込みに対応できる「インタラティブドラマ」の2つの課題における基盤技術の創成を目指す。本プロジェクトの詳細および進行状況は、以下のページにて報告する。http://www.ice.ritsumei.ac.jp/researches.html
実時間画像処理を用いた双方向エンタテイメントプロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/教授 徐 剛
これまでのデジタルアーカイブにおいて、形状と色彩のアーカイブは別々に行われてきた。本研究に於いては、それらをより有機的に統合し、初めての「コンプリート・デジタルアーカイブ・システム」を構築し、京都の著名な文化財のいくつかを形状と色彩の双方から復元し、世界に向けて公開する。
京都歴史的・文化的建築物のデジタルコンテンツ化プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/教授 田中 覚
京都の町並みや文化的建造物を様々な形で可視化・分析するという視点から、文理融合の研究を行う。文化系の研究に役立つデジタル・コンテンツを作成し、かつ、3次元計測やCGに関する情報・理工系の新技術を開発する。
3次元仮想空間におけるコミュニティ形成プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/助教授 西村 俊和
だれもが自由に参加・構築可能な三次元仮想空間を計算機ネットワーク上に構築し、共通の興味を持った同好会や研究者グループ等コミュニティの形成を支援する。文化を醸成するためには、コミュニティ内の構成員に共通の価値観が存在し、それを物心両面において活動・具現化しなければならない。しかしながら、通常これまで用いられてきた計算機システムの多くは管理主体によって利用者の行動が制限されているため醸成されるのはシステム独自の利用様式であり、既存のコミュニティの発展と文化の醸成に役立つものとは考えにくい。本研究はPAN(Personal Ad-Hoc Network)と呼ばれる局所的な機器間計算機ネットワークを導入して実世界におけるコミュニティの実地調査を行い、コミュニティの形成支援手法を提案するものである。通常の利用者の代わりに自立的に動作するプログラム群を三次元仮想空間に配置すれば、特定のコミュニティによる都市開発や文化醸成を模すことができる。ここではこのようなプログラム群を利用者エージェントと呼ぶ。実地調査以降は、通常利用者の利用調査や利用者エージェントの構成を行い、文化醸成の模擬を実施し、利用者エージェントの導入の社会的な影響を明らかにする。
京都観光地のサイバースペース化プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/教授 池田 秀人
サイバースペース技術としては、既にVRMLなど3Dモデルのダイナミックレンダリングによる仮想世界のウォークスルー技術が確立されてきていますが、「スケーラビリィティ」、「仮想世界の秩序の維持」、「高画質化によるリアリティの向上」、「可能なアクションの拡大」、「動きの自然性」など、解決されていないさまざまな問題が残っており、まだあまり応用が無いのが現状です。
本プロジェクトは、これから広がってくるであろう、仮想世界でのアートやエンタテインメントを行う場としてのサイバースペース技術を確立しようとしています。その成果は、「サイバー京都観光」として体験していただけるものとする計画です。
基盤システム
京都アート・データベースのための高度情報検索方法の研究プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・総合理工学専攻/教授 川越 恭二
京都アート・エンタテインメントプロジェクトでは絵画、写真、映画などの京都文化のデジタル化が企画されている、京都文化に関わる音楽、地図上での行動、映画などのデータベースやWebサイトが構築された場合に、そのデータベースの中からほしい情報をはやくみつけるかが重要となる。本研究は、音楽、映像、行動などのメディアデータやそれらの複合メディアデータを統一した方法によって効率的に類似検索を行う手法を開発している。本研究により、音楽や映画などのデータ1件を条件として与えれば、そのデータと類似した他のデータを即座に取り出すことが可能なシステムを構築することが可能である。また、データに付加された属性や特徴を併用すればさらに絞込んだ検索結果を得ることが出来る。
ソフトコンピューティングによる人間の知的活動モデリング
プロジェクトリーダー:理工学研究科・フロンティア理工学専攻/教授 亀井且有
本プロジェクトはこれまで工学の分野では扱われることがなかった、あるいはギリシャ時代から科学では排除されてきた人間の情動や感情をも含む幅広い知的活動を最新のモデル化技法であるソフトコンピューティングを用いてモデリングすることを目的としている。本プロジェクトの研究成果により、人に精神的あるいは心的な豊かさを提供することのできるシステムやロボットが実現できる。21世紀は情報社会といわれるが、心の豊かさを伴わない情報社会では人は生きることはできない。本プロジェクトは21世紀に生きる人間にとって本当に豊かな情報社会を作ることを目指している。
メディア処理基盤プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・菅生理工学専攻/教授 大久保 英嗣
ユビキタスコンピューティングの分野では、処理とデータが頻繁に計算機関を移動する。このため、PDAを始めとする処理性能の低い携帯端末上で各種処理を行うためには、環境に適応して必要な処理を行い、必要なデータのみを転送する必要がある。本研究では、このようなユビキタスコンピューティングにおけるネットワーク、オペレーティングシステム、ミドルウェア、ユーザーインタフェースの統合環境について研究している。
マルチモーダルインタラクションに関する研究プロジェクト
プロジェクトリーダー:理工学研究科・フロンティア理工学専攻/教授 小川 均
計算機から人に情報を伝える方法は多く開発されているが、人間から計算機に情報を伝える方法は、現在キーボードやマウスが主体で、その他は音声が使えるようになってきた程度である。本研究では、人間がもっと自然な形で計算機に情報を伝える方法の開発を目標とする。まず、マルチモーダルインタラクションに関する技術手法について国内外の学術誌や研究会において調査を行い、この分野における最先端技術の長短所を検討する。この調査結果に基づいて、現行にふさわしい計算機と自然に対話できるシステムの提案・開発を行う。このためつぎの4つを研究テーマを設定し、それぞれを開発し、実験を通じて改良を行う。人間の行動を追跡し、顔による人物識別、身振りによる人間の意図・状況認識システム、人間の嗜好を反映し対話しながら問題解決を行う分散型重みつき制約充足問題解決機構、各個人のスケジュールに合わせた通信方法の設定を行うコミュニケーション支援システム、そして、開発したシステムを安全に実現・実行するために内外からのアタックを早期発見する計算機ネットワーク監視システムである。について研究を行う。