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ぬえ


画題

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解説

鵺退治

東洋画題綜覧

鵺は鶫科に属する野鳥虎鶫の別名、鶫類中では大形で、雌雄同色、背は黄褐色、下面は黄白色、腹の中央だけ白く、背面にも下面にも新月型の黒斑がある、夜半から暁かけて無気味な鳴声をするので、いろ/\と鳴声に就いて不吉の迷信が伴ふ。これを画にしたものに小室翠雲、水上泰生の作がある。

一にまた謡曲の名、清次の作で、題材を『平家物語』に取り、源三位頼政に退治され、空穂舟に乗せられて淀川に流された鵺の亡霊が旅僧に弔はれ成仏するに作る。(「源三位頼政」の項参照)一節を引く。

実に隠れなき世語りの、其一念を翻へし、浮ぶ力となり給へ、「浮ぶベき、たより渚の浅緑、水のかへはに有らばこそ、沈むは浮かぶ縁ならめ、「実にや他生の縁ぞとて、「時もこそあれ今宵しも、「なき世の人に合竹の「棹取り直し空穂舟、「乗ると見えしが、夜の波に、「浮きぬ、沈みぬ見えつ隠れ絶々の幾重に聞くは鵺の声、恐ろしや冷ましやあら恐ろしや冷ましや。

「御法の声も浦波も、皆実相の道弘き、法を受けよと夜と共に、此御経を読誦する、一仏成道観見法界、草木国土悉皆成仏、「有情非情皆共成仏道、「頼むべし、「頼むべしや、五十二類も我同性の、涅槃に引かれて真如の月の、夜汐に浮びつゝ是まで来れり、有り難や。

この意によつて画いたものに梥本一洋筆『鵺』(昭和十一年文展招待展出品)がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)