華厳縁起

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けごんえんぎ


画題

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解説

東洋画題綜覧

華厳宗の祖師の行状を記したもの、昔新羅に義湘、元暁といふ二人の僧があり共に入唐を企てゝ発足したが一夜塚窟に宿つて、元暁は心の外に仏なしと悟つて入唐を断念して故国に帰り、義湘のみ初志を翻さず死を誓つて入唐し唐の都長安に到り、更に終南山智儼三蔵にあひ、華厳経を将来したのであるが、会々長安で乞食する中、美婦善妙に懸想せられその唐を離るゝに当つて、善妙は海に投じたが忽ち大蛇となつて船を負ひ、その船恙なく故国に達するや大磐石となつて、浮石大師即ち義湘の寺の護りとなつたといふ、我が道成寺縁起式伝説となつてゐる。その絵詞の一節を左に引く。

義湘の船既に唐の津につきて里に至りて乞食するに善妙といふ女人あり、容いつくしき聞え高し、義湘又美容の人なり、威儀安祥として門戸に立て食を乞ふ、善妙之を見てこびたる眉をあげたくみなる声を出して法師に申して曰く、法師高く欲境を出て広く法界を利す、きよく其功徳を渇仰し奉るに我心忽ちに動く、願くは慈悲を垂て我が妄情をとげしめたまへといふ、法師此の言葉を聞き、そのよそほひを見るに心固きこと石の如し、慈悲をたれて答へて曰く、我は仏戒をまもりて身命をつぎにせり、浄法をさづけて衆生を利す、色欲不浄の境界久しくこれを捨てたり、汝わが功徳を信じて長く我を恨ること勿れ、善妙この詞を聞て忽ち道心起す慙愧懺悔して大願おこして曰く、我無始の妄執深くして法師の心を悩し奉り、ついいまさきの邪心を翻へし長く法師の功徳を仰ぎ奉らむ、願くは生々法師と共にうまれ、はなれ奉らずして広大の仏事を興し法界の衆生を利したまはむ所ごとに影の如くにそひ奉りて所須を供給し資縁をたすけ奉らむ、願くは大師大慈悲をたれてわが願を納受したまへ、なく/\此の詞を説くに大師あはれみをたれ給ふ、其後至相大師の所に行きて一乗法界の頌釈をつくり義持成就の記別を得給ふ。  (義湘絵三巻)

華厳縁起の世に伝ふるもの左の如し

鎌倉時代筆者未詳   (国宝)  京都高山寺蔵

同華厳五十五処画巻  (同)   大和東大寺蔵

又現代の作家の作には左の一点がある。

堂本印象筆  『華厳』  第六回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)