脚本

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総合

能の脚本として、すべての演者の演出が記されたものはまずない。

シテ方してかた・ワキ方わきかた・囃子方はやしかた・狂言方きょうげんかたが、それぞれの担当部分を記した脚本を用いるのが常である。これは、能の上演舞台を構成するそれぞれの役やく(専門)には分業的な性格が強く、申し合わせもうしあわせなどで役同士の演出が調整されることが多いことと関係している。

また、流派によっては標準的な脚本が制作されていることもあるが、決まり事であっても、口伝くでんとされる事柄は原則的には譜に記されず、また、演者によって、古くから伝わる様々な脚本の類を個人的に参照する場合も少なくない。

能の脚本として挙げられるのは、大別して次の二種である。

謡本(うたいぼん)

本来は音曲芸能としての謡うたいを書き留めた譜本であるが、実際には、舞台芸能としての能の脚本としても用いられる。謡本を能の脚本として用いる場合には、本文に、それぞれの箇所での立ち役の身体動作や囃子はやしの技法などの注を付け、特定の演者の自作の付つけにして用いることが多い。最初から脚本として制作される付の類は、ほとんどが謡本を参照し、土台にしている。その意味でも、謡本は、舞台芸能としての能の脚本の性格を持っている。また、特に能の鑑賞者・愛好者には、市販されている謡本が、能を鑑賞する際に手元に置く上演の脚本としても活用されている。

付(つけ)

主に、能のシナリオ(謡や狂言きょうげんの台詞)を記したものに、それぞれの箇所での他の演出の注記を加えたもの。型付かたつけ・手付てづけなどがある。

型付

シテして・ワキわきなど、立ち役の身体動作の注を記した付。

手付

大小鼓だいしょうつづみ・太鼓・笛の手て(譜)を、謡のある部分はその本文の左右に、囃子事はやしごとの部分は囃子の譜だけを、それぞれ記した付。

また、謡本も、詞章に謡の吟(メロディ)やリズムの注を記した(節付ふしづけを行った)ものであり、広い意味では付つけの一種と言うこともできる。

狂言の脚本狂言の台詞や謡を記した脚本で、能の台本として用いられるのは、その中でも能の曲中で演じられる、間狂言あいきょうげんの脚本である。