絵兄弟(浮世絵)

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総合

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概要

吉田暎二(『浮世絵事典』緑園書房、1965年)

  • 絵兄弟

歌麿や栄昌、国貞、国芳の錦絵の外題に「絵兄弟」の文字を見るものがある。これは天明、寛政頃から行なわれた絵合わせ遊戯の一つで、図様のよく似たものを合わせ比べて、その絵の趣向によっていずれが兄か弟かを競った遊びであった。それを取材したのが、上記の絵師の作品の「絵兄弟」である。歌麿の「絵兄弟」は堅大錦の揃物で、何枚出たか不明であるがコマ絵に源三位政の鵺退治を描き、本画は遊女が灯を掲げている下で金太郎が桝落しで鼠を捕えている図。コマ絵に女三の宮の図を描き、本画はお姫様が犬を曳いている図その他二図を見ているが、寛政後期の作品の、近江屋版で、すぐれた作品でもない。栄昌のは「絵兄弟美人合」と題したやはり竪大錦の揃物で、これはいずれも夏衣裳の美人の座った姿が描かれている。私の見ているものではコマ絵に高砂の尉と媼を描いたもの、網船を描いたもの、紅葉を焚く三人仕丁を描いたものの三枚であるが全身美人を描いた栄昌の作ではすぐれたものである。技巧的にも一様に夏衣裳であることと、座像であることの変化を、着物の羅物や絣や模様の摺刷でみごとに救ったものとして特筆すべきである。国貞には「絵兄弟忠臣蔵」の揃物があり、各図とも雲形仕切って上部に忠臣蔵各段の絵を描き、中央に当世美人を描いたものである。国芳のは「絵兄弟やさすがた」といって五枚揃である。また英山に「風流忠臣蔵絵兄弟」があり、その他の絵師にもこの「絵兄弟」を外題としたものがあろうし、版本にも見ることが出来る。

鈴木重三(『原色浮世絵大百科事典』第四巻 画題-説話・伝説・戯曲-、大修館書店、1981年)

  • 絵兄弟

一図中に本絵と似た趣の図様のこま絵を配し、対比の面白さを狙った構図形式の作品。俳諧の付合にこの面白味を図った其角の『句兄弟』(元禄七 1694)にアイデアの端を見るが、名称はこれに倣った山東京伝の『絵兄弟』(寛政六 1794)から直接得たものであろう。茶番劇風の即物的な見立から、しだいに不即不離の観念的見立にパロディの妙を誇る態度へと進んでいる。

浅野秀剛(「栄昌『絵兄弟美人合』図版解説」、『浮世絵芸術 100号』、1991年

絵兄弟とは、絵による付合ともいうべく、コマ絵と本絵に趣の似た図様を配して対比の面白さを狙ったもので、見立・やつしの一変型と考えてよい。

先行する文芸

  • 句兄弟』(其角編、元禄七 1694)
  • 絵兄弟』(山東京伝著、寛政六 1794)

作例(絵師・年代順)

Ryoko Matsuba 2010年12月12日 (日) 07:15 (JST)