江口の君

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えぐちのきみ


画題

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解説

(分類:物語)

東洋画題綜覧

江口は山城の国にあつて神崎川の尼崎に落ちる河口、こゝに平安朝の末から鎌倉時代にかけて遊女多く、書写山の性空上人が遊女江口にあつて普賢の像を見た物語が有名である。

此の聖人は法花読誦の功によつて、肉身にまのあたり、六根清浄の功徳を得たりといへども、生身の普賢菩薩の尊像を拝見し奉らぬ事、うらみの中の恨みに侍りとて、七日祈念していまそかりけるに、七日のあかつきのうつゝに、天童詫していはく、室の遊女が長者を拝め、それぞ実の普賢なるとしめして失せ給ひぬ、ふしぎと思ひおどろきて、急ぎ室へいたり給ひなんとす、墨衣にては遊女を見んといはん事あしかりなんとて、白ききぬき給ひて、同じさましたる僧五人ぐして室の長者が庵にいたりつき給ひて宿をとり給ふに、長者出であひやがて酒すゝめ奉れり、しひ申とて舞をまひうたひけり、周防のみたらしの沢辺に、風の音づれて、とかずふれば、ならびゐたる遊女ども同じ声して、ささら波たつ、やれこさつとうけはやしけり、されば是れは生身の普賢にこそと思ひ給ひて、目をふさぎ心をしづめて、観念をし玉ふ時に、端厳柔和の生身の普賢、白象に乗り給ひて、法性無漏の大海には普賢恒順の月、ひかりほがらかなりとうたはせ給へり、又目をあきて、是れを見給へば、遊女の長者なり、うたふ声もさゝら波たつといふなり、又目をふさぎ心を法界にすませば、長者又生身の普賢にてましましけり、上人貴く頼もしくいまして暇を申し出給ふほどに十町ばかり去り給ひてのち此の長者は俄かに身まかりにけり。 (撰集抄)

江口の君を画いた作の主なもの左の通り

円山応挙筆  (重要美術品)  岩崎男爵家蔵

柴田是真筆           中山佐市氏旧蔵

宮川長春筆           青地家旧蔵

松村呉春筆           紀伊浜口氏蔵

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)