橋姫

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はしひめ


画題

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解説

画題辞典

源氏物語の内なり。桐壺のみかどの御子源氏の弟に八の宮といふが坐はす。朱雀院の御母この宮を御位に立てんと思ひしを、遂に叶はず。冷泉院帝位に昇り玉ふ。それが為めに八の宮は八条の御殿に坐せしも火に焼けて後御落命あり。宇治の山里に引き込み住はる。されば宇治の宮とも申しぬ。此宮に美しき二人の姫宮あり。宇治の宮諸道にも暗からざりしことゝて、薫の大将も之れへ物習ひに通ひ玉ひけるが、かの美しき姫を御覧じて、

  橋姫の心をくみて高瀬さす    さをの雫に袖ぞぬれぬる

と詠み玉ふ。その後ともに薫大将宇治に通ふ道すがらも姫のことを忘れやらず、或時山路の露冷かなるを分けて行く馬上の詠に

  山おろしたえぬ木の葉の露よりも    あやなくもろき我なみが哉

やがて宮のかたへ至りつるに、宮には宇治の奥の阿閣梨がもとに到りし留守にて姫達琴など遊ばし居玉ひり。此君逹の後見せるは弁の君といふ女房にて、薫が真の親の柏木がめのとなりしを西国に下り更に都に上り来りて今此に在るなり。薫即ち弁の君に忍びて対面あり。昔語りなどありしとなり。之を橋姫の趣向とす。東京帝室博物館の所蔵に住吉具慶描ける一巻あり。又宇治の橋姫に就きてはその条を見るべし。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

怒れる女の眥を裂く顔、目には金具を入れて鬼形を意味する、『鉄輪』及び『海士』の後シテに著る。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


(一)『源氏物語』宇治十帖の一、光源氏の弟で八の宮といふ人があり、世が世ならば東官にも立つべき身でありながら、よしなき勢力争ひの犠牲となつて宇治の山里にかくれ住む処から、宇治の宮とも呼ばれた、此の宮に美しい二人の姫があつた、字治の官は、万の道に長けてゐたので、薫の大将は物を習ひに通ふ中此の姫に思をかける、丁度、宮は宇治の奥の阿闍梨の処へ出かけた留守、姫達は琴など弾いてゐると薫の大将が訪れて来る、姫達の身のまはりの事は弁の君といふ女房が取り仕切つてゐたが、この弁の君は、薫大将の生みの親たる柏木の乳母であつた、ここで此の弁の君から果なくも薫大将の誕生の秘密を聞く、

網代は人さわがしげなり、されど氷魚もよらぬにやあらん、すさまじげなる気色なりと、御供の人々見知りていふ、あやしき船どもに柴苅り積み、おの/\何となき世のいとなみどもに行きかふさまどもの、はかなき水の上に浮びたる、誰も思へば同じことなる、世のつねなさなり、我はうかばず玉の台にしづけき身と思ふべき世かはと、思へつゞけらる、硯召してあなたに聞え給ふ。

はし姫の心をくみておかせさす棹のしづくにそでぞぬれぬる

巻の名は右の一節の歌から出てゐる。

源氏絵として面白く、東京帝室博物館には住吉具慶の作がある。

(二)能の面の名、怒れる女の眥を裂く顔、目には金具を入れて鬼形を意味する、『鉄輪』及び『海士』の後シテに著る。  (奏風能面解説)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)