室君

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むろきみ


画題

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解説

画題辞典

一室君は播州室の津の遊君なり、室の津は王朝時代に於て、西国交通の要衝に當り、船舶の出入多く、千客万來の土地とて、其等の放情を慰むべく、遊女も亦甚だ盛なり、之を室君と稱す、第十四回文展に松岡映丘図あり。二謡曲に室君あり、室君即ち遊女を船に載せ、室の明神の神前に参り、神事を行はしむることを叙したり、能画として描かる所あり。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

室君は播磨の国室の津の遊女である、室の津は古へ室原泊、檉生泊などと称へ港は狭いが平安朝の頃から五泊の随一として瀬戸内海の要衝であり船舶の出入多かつたので、遊女も多く旅客はこれに旅情を慰めた、室君といふ名はかうして高くなり、『撰集抄』をはじめいろ/\のものに現はれてゐる、『長門本平家』にも

或時入道相国、厳島へ月詣の時、室の泊に著れたり、彼所の習なれば、遊君ども参て思々に幸をひく、或君一人其中に縁やなかりけむ、思結方もなく浪の上に浮て、こなたへたどりけり、さてあるべきにあらねば、宿所へおし帰る船をくゝり行きけるが、暁白拍子をかわへすましたり、誠に声も隈なし、節も足らひたる上手にて有ける。

などとある。

これを描いたものに、松岡映丘筆『室君』第十回文展出品がある。

また謡曲に『室君』がある、室の明神即ち加茂神社へ、室君数十人白拍子の姿で船に乗り幣を捧げ神前に至る神事を作つたもの、明神がシテ、ツレが室君、ワキが神職である。

「室の海。「室の海、波ものどけき春の夜の、月のみふねに棹さして、霞む空は面白やな、「梅が香の「梅が香の磯山遠く匂ふ夜は、出船も心ひく花ぞつなでなりける、此花ぞつなでなりける、「近頃めでたき御事にて候ふ、又ことごとに/\棹を御さし候ふほどに、さをの歌を御うたひ候へ、「さをの歌、うたふ浮世の一節を「うたふうきよの一節を、夕波千鳥こゑそへて、友よびかはすあま少女、恨みぞまさる室君の行く船やしたふらん。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)