浮世絵基礎知識 2
-  絵の種類 -
 
続絵 組物 死絵 見立絵 大首絵 団扇絵 玩具絵

<続絵>

複数の版画により、一つの画面を構成するように意図して制作される版画を言う。
役者絵の場合は、それぞれの画面に一人ずつ描かれていることが多い。それぞれの絵は、一枚でも鑑賞できるようになっており、かならず揃いで購入する必要がなかったから、自分の贔屓の役者の絵のみを買う場合もあった。一人ずつで一つの世界をつくっていたものが、続き絵で揃うとまた、大きな画面を構成して舞台の広がりが見えてくる。
また、単純に横に続く場合もあるが、縦続きもあり、特殊なものでは、2×2の四枚もの、3×3の六枚もの、さらには、凸型3枚ものや、L字型3枚ものなど、さまざまな組み合わせがある。

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<組物>

一つの表題のもとに何枚かの版画で一組となっているものを言う。五枚組みから、多いもので百枚組まである。
文化・文政期の変化舞踊も、舞踊小品の組み合わせであるので、組物として売られた。

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<死絵>

俳優や絵師などの死亡時に、訃報と追善を兼ねて出版された追善絵のこと。故人の画像に享年・戒名・追善の句や歌、辞世などが添えてある。白装束か浅黄の着物の立像や坐像が主だったが、中には、次第に意匠を凝らした変則的なものもある。死絵は人気スターの死去を伝える新聞の号外にあたるため、情報が早ければ早いほど、売行きが期待でき、既製の役者絵の版木を流用したり、慌てて製作にかかるため、不正確な情報のまま売出されることも多い。特殊な事例では、死んでもいないのに、誤報のまま売出した例さえある。また、人気役者ほど、死絵の数は多くなり、当時の人気度を表わすバロメータとしての役割も持つ。

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<見立絵>

よく知られた説話や画題を使って、当代の事物や人物に準えて絵解きして描いた絵や、この役者にこうした役を演じさせたいという願望から生まれた架空の配役の役者絵を見立絵と呼ぶ。個々の役者にふさわしいと思われる役柄の扮装をさせてシリーズを構成したものなどは、3代目歌川豊国らの作品によく見られる。いずれにせよ、これらは庶民に分かりやすく、喜ばれるものは何かを追究して描かれた、最も浮世絵らしい大衆的な商品であったといえよう。

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<大首絵>

役者や美人などを画面に七分身、半身など胸像的な構図で描く様式のことを言う。初期にはあまり事例がなく、天明から寛政期になり、作例が見られるようになるが、寛政六年に東洲斎写楽の描いた大首絵が一つの頂点を示す。そこには、人気役者へ向けられる眼差しが、一人の個性やきめ細かな表情にまでズームアップしていく過程を見ることができるが、これを境にあまりに真実を描くより、初代歌川豊国らの如く、個性を描きながらもその理想像を描き分ける技法に向かっていった。

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<団扇絵>

団扇に貼るために作られた版画で、役者絵や美人画のものが主流だが、幕末頃には風景画や花鳥画のものも作られた。団扇絵は、季節物であるが、生活用品であったため、人気の役者やその年の大当りした芝居の一場面、これから大入を狙う芝居の一場面が描かれて売出され、相互に人気を煽ったものである。改印も団扇絵独自のもので、一般の浮世絵とは、流通経路の異なっていたことが、ここからも確認できる。
作例も古くは元禄期から残るが、一般には、使い捨てられる運命にあったものであるから、残存数は少ない。

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<玩具絵>

子供の遊戯用、鑑賞用に作られた玩具としての浮世絵のこと。芝居の一場面をプラモデルのように組立てる組上絵(立版古)、切り離して着せ替え人形のようにして遊ぶきせかえ絵、色々な姿の女性の裏表両面を描き、これを切り抜いたものを貼りあわせて 遊ぶ姉様絵などの細工絵や、動物を題材にした擬人絵、絵双六、絵加留多など、その種類は多様である。 

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