立命館大学アート・リサーチセンター所蔵
浮世絵名品展 第一期 出品目録
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第二期
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明治期舞台絵(一人立3枚横続)
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歌川国周(大判錦絵3枚続) UY0045,0046,0047
「歌舞伎十八番之内 暫」「市川団十郎」
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明治28年(1895)11月12日 歌舞伎座
おおさかじんしょけのかきどめ
しばらく
大阪陣諸家記録 中幕 暫
鎌倉権五郎景政〈9〉市川団十郎
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「歌舞伎十八番」の中の「暫」は、現在行われる歌舞伎の荒事の代表的なものの一つである。「暫」は〈1〉市川団十郎によって創設され、江戸の顔見世興行では、主に市川系統の役者によって必ず上演される演目であった。主人公の役名はその時に応じて変わったが、その筋はほぼ一定しており、悪の公卿が服従しない善良な男女の首を手下に切らせようとすると、花道の揚幕から「しばらく」と声がかかり、紅で隈取をとり柿色の素袍に長い太刀を着けた主人公がゆうゆうと登場して悪人の首を一太刀ではねた後再び花道を引き返すという単純明解ものである。この絵では真正面を向いてにらみつけた〈9〉市川団十郎が描かれ、その迫力は数多い「暫」の絵の中でも際だっているといえるだろう。
歌川国周(大判錦絵3枚続) UY0265,0266,0267
「歌舞伎座秋狂言菅原」
「時平公七ワらひ 市川団十郎」
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明治30年(1897)11月2日 歌舞伎座
ちんせつゆみはりづき
しへいこうななわらい
椿説弓張月
中幕
時平公七笑
時平公〈9〉市川団十郎
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この作品の取材狂言である「時平公七笑」は、「菅原伝授手習鑑」の書替狂言で並木五瓶の手による「天満宮菜種御供」を福地桜痴が〈9〉市川団十郎のために活歴調に改訂した作品。描かれた場面は自らの奸計に見事にはまり、太宰府へと流罪になった菅原道真を見送り、一人残った時平が大笑いして幕となる場面。桜痴の改訂により、従来のように目障りな菅原道真を追い落とすために時平が奸計を仕組んだのではなく、帝の革新的な政策に反対する保守派の菅原道真を追放するためであったという設定に改変させられた。しかしこの活歴調の演出は見物には受入れられず、不評に終った。
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