立命館の学祖、西園寺公望の蔵書を中心に、公望自身の数度に及ぶ寄贈、公望没後の西園寺家からの寄贈、更に大学により補充された資料をも含めた総数約7000冊(和漢書約6800冊、洋書約約210冊)に及ぶ浩瀚な文庫。収載する書目のジャンルも広汎である。
 古典籍は文学にも造詣の深かった公望の嗜好を反映し、近世堂上和歌御会関係資料を中心とする歌書が基幹を為す。公望自身の集書活動については未詳である。その他、西園寺家伝来の宮中儀式書や楽書も一部所蔵する。今回出展できなかった近世和歌関係資料は日を改めて公開したい。

鷹百首

 「西園寺相国鷹百首」「西園寺殿鷹百首」とも。作者は公経とも実兼ともいうが未詳。明応4(1495)年5月に尭恵が細川成之に同書の注を授けていることから、15世紀末には成立していたと考えられる。伝本は非常に多い。ここではその伝来に関与する西園寺文庫蔵の三点を紹介する。なお、鷹百首諸本の整理及び概観については山本一氏の考察(国文学研究資料館調査研究報告18号所収論考等)を参照されたい。

081 後西園寺入道殿鷹御詠   立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.148/Sa22

@写本1冊(元巻子本) A縦16.6
E内容は「鷹詞四季分別之事」に続き、「西園寺殿鷹之和歌 又其外古哥加之了」という「鷹山に」系統の鷹百首が収載される。百首に続いて定家・家隆・順徳院等、新古今時代の歌人の作品が採録されているのが注目される。

082 鷹百首   立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.148/Sa22

@写本1冊 A20.4×16.2 B西薗寺相国家作 D文明5年3月に書写した旨の明応3年6月の奥書あり。
Eいわゆる「鷹山に」系統の百首歌とその注釈。西園寺相国の名を冠す室町期の一本。

083 西園寺家鷹秘伝   立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.148/Sa22

@写本1冊 A26.8×19.8
E扉題「西園寺家鷹百首」、内題「西薗寺相国御家秘伝事并歌」。鷹歌155首を四季及び雑部に分類した一書。西園寺文庫本は明応から享禄、永禄にわたる書写奥書と天正2年の識語を有する。「鷹百首」の伝来及び受容を考える上で注目すべき一本。

その他

084 俳諧絵合    立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.31/Su31

@横本 2巻2冊 俳諧選集 A13.4×19.9 B菅野谷高政編 C林和泉 D延宝3年(1675) E天巻一冊を所蔵する機関は複数あるものの、地巻を所蔵するのは西園寺文庫のみ。天・地二巻二冊の原姿はこの一冊によってかろうじて今日まで伝えられている。巻末の「聞書百首立」に掲載される諸家の発句の中、江戸の杉風の入集などは特に注目されるところである。

085 連歌賦物篇 源氏物語一部簡要 立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.2/R27

@写本1冊 A24.5×17.1 E一条兼良篇『連歌初学抄』所収の「賦物篇」と、巻名歌を中心とする『源氏物語』の梗概書を合冊した連歌師必携の一書。書写は新しいものの、西園寺文庫本では源氏注の細字部分に興味深い言説が示されている。

086 連集良材  立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB911.2/R27

@大本 1冊 連歌 A27.8×18.9 D寛永8年(1631)E連歌の寄合の中、漢籍を出処とするものを、漢故事を標題として掲げ、句例を挙げつつその内容を解説したもの。「十八公」から始まり、「三径」の故事で終わる。末尾に「楓橋夜泊」及び「三月晦日」の七絶2首が採録されている。無刊記本が多い中、西園寺文庫本は寛永8年の刊記をもつ一本を蔵する。

087 長恨歌并琵琶引   立命館大学図書館西園寺文庫蔵 SB921.43/H19

@写本1冊 漢籍 A29.4×21.9 D天和3年(1683)6月写 E「長恨歌」古鈔本の書写。奥書に天和3年6月、舟橋(清原)宣賢の自筆本を書写した旨が記されている。宣賢自筆本の古鈔本と言えば、龍門文庫蔵本が知られている。西園寺文庫蔵本も「長恨歌伝」・「長恨歌序」を併せもつ点で宣賢自筆本と一致するものの、訓点や声点で異なる箇所も見られる。宣賢研究及び本邦室町時代の「長恨歌」受容を考える上での貴重な一本である。